LHC冬眠する

http://www.timesonline.co.uk/tol/news/uk/science/article4813036.ece
先々週稼動したばかりのLHCが早速冬篭りしてしまった。いまから光速の99.9999991%まで加速された5TeVの陽子が衝突せんとしていた矢先、ヘリウム漏れによりマグネットが加熱して緊急停止せざるをえなくなってしまったのだった。修理には2ヶ月かかるとのこと。実際にはヘリウム漏れを起こしたマグネット間に生じた亀裂を補修すればいいだけなので2週間程度で済むんだけど、なにせ1.9ケルビン(−273.15℃)まで冷却するもんだから急に上げ下げするわけにはいかんのですよ。急激に温度を変えちゃうとマグネット自体が壊れてしまうので、徐々に暖めていき、修理が終わったら徐々に冷やしていくため、2ヶ月ほどかかってしまう。
2ヶ月先というと北欧は冬に突入してしまい一般の電気供給量が足りなくなる恐れもあるため、一時シャットダウンすることは予定に入っていたが、結局このトラブルによりそのまま冬眠という形になってしまった。残念なことだ。

LHCはこれまでの加速器とは規模が異なる超伝導加速器であることも特徴で、超伝導コイルならば電気抵抗はゼロなのでいくらでも大電流を流して超高密度磁場を発生させることも可能となりTeVスケールまで一気に引き上げることができた。しかし、そのため逆に超伝導コイルの温度管理が非常にシビアで、仮に一箇所で超伝導状態が壊れてしまうと一瞬のうちに温度が上昇してしまい、気体となったヘリウムがコイルを破壊、コイルの中は超真空状態だから連鎖反応によって大破壊にも繋がりかねない。慎重に慎重を重ねて温度を下げていって周囲27km、1700台の超伝導コイルを順次冷やしていかなければならない。これはまさに、数千人の研究者・技術者たちの汗と涙と5000億円という各国の血税でできた世界最高峰の実験施設なんだ。

だから、この加速器でなにも出ないなんて、絶対に絶対に絶対に絶対に絶対にある訳ないんだ。神は信じないが、ヒッグスは見つかることは信じていたりする。