尿素海洋汚染

Urea pollution turns tides toxic : Nature News
ヒッチコック監督のホラー映画”The Birds”(1963年)には数々の鳥が人間を襲うシーンが描かれているが、現実にも大量の鳥が一晩に現れたという現象があった。それは1961年8月16日のアメリカはカリフォルニアでコウノトリの1種であるハイイロミズナギドリが次々と屋根の上に落ちてきて、道は鳥の死骸で埋め尽くされたそうだ。この奇妙な現象はドウモイ酸という駆虫剤の一つとして使用されるアミノ酸が原因と推定される。このドウモイ酸は日本の醍醐皓二って人が1958年の徳島県で最初に発見・精製したんだけど、効果としては主に神経系及び中枢系に作用して重度の記憶障害や麻痺を引き起こす。これはドウモイ酸が脳内にあるニューロンのレセプターに働きかけることで興奮状態が永続し細胞が死滅してしまうためだという。ドウモイ酸はもともとハナヤナギという藻類から取り出された物質で、この種の藻類が開花するときにこの毒物質が放出されて、その毒を貝類やそこを偶然通りかかった魚に吸収・蓄積され、それを食べた鳥が中毒症状を起こしたというわけ。
過去にも、カナダにおいてムラサキガイによる集団中毒が起こり、4人が死亡12人が重度の記憶障害に陥った。原因物質はこのドウモイ酸によるものだった。それで最近問題になっているのは、海洋動物のドウモイ酸に似た中毒症状により死に至るケースが頻繁に見られる点で、藻の開花によるドウモイ酸濃度が近年高まっているらしい。その原因は、どうも人間の作り出した尿素によるものではないかという研究報告を紹介したのがこの記事。実験ではアンモニアと硝酸塩、尿素を藻がいる水槽に入れて比べたところ、尿素の水槽で最も多くのドウモイ酸が抽出できたということらしい。

尿素は海洋にはほとんど存在しない成分で、恐らくは植物栽培に与える肥料が流れ込んでいたり、貯蔵タンクの腐食により漏れ出してたりしたんだろうと推測している。もともと陸上の植物の生育促進の目的で作られたんだから、海洋植物にも有効なんでしょうね。その栄養剤の恩恵で藻の開花頻度も上がって、そのため毒物質も多く取り込まれてしまったという、またしても自然摂理に反した身勝手な人間行動による大罪。