LHC report confirms electrical fault


http://physicsworld.com/cws/article/news/36255
9月19日の午前11時(現地時間)に液体ヘリウム漏れに伴う”クエンチ”により稼動を停止したスイスはジュネーブ近郊のCERNにある大型陽子陽子衝突加速器(LHC)の事故原因の中間報告書がまとまったそうだ。原因はセクター3−4にある2重極(C24)と4重極(Q24)電磁マグネットの繋ぎ目の電気配線の人為的ミスということらしい。

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Simple temperature change creates spin current

http://physicsworld.com/cws/article/news/36164
物性物理学の最近の話題を一つ。特定の向き(アップ・ダウン)に偏極した電子スピンの分離にこれまでより1万倍も長くすることに成功したという研究。英国物理学雑誌Nature誌の10月号に連載されている(Nature 455, 778)。first authorの内田という人の卒業論文だそうだ。ボスは慶応大学の斉藤専門講師。

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The 2008 Nobel Prize in Physics

The Nobel Prize in Physics 2008 - NobelPrize.org
今年のノーベル物理学賞が発表された。驚くことに日本人3人の受賞となった。しかも素粒子物理学。一人は南部陽一郎氏(シカゴ大名誉教授)、共同受賞として小林誠氏(高エネルギー加速器研究機構ダイアモンドフェロー)、益川敏英氏(京大名誉教授)という顔ぶれ。共に名誉教授ということで、第一戦から離れて久しい人たち(ここにも高齢化の波か・・・)。

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Ig Nobels Honor Studies

News | Science | AAAS
今年のイグ・ノーベル賞の受賞者が米マサチューセッツ州ケンブリッジハーバード大において発表された。日本人の研究者が前回(牛糞からバニラの香りと味成分の摘出に成功。国立医療センター・山本氏)に続きまた入っている。今年は粘菌の賢さについて。粘菌に迷路を解かせてみると最短距離をしめすという研究*1。NHKの『サイエンスZERO』でも放送していた。

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Journey to the Center of the Neutron


Physics - Focus: Journey to the Center of the Neutron
中性子電荷分布に関する最近のフォーカス。よく知られているように、中性子アップクォーク1個とダウンクォーク2個で構成される核子だけど、陽子と違って電荷はない。クォーク電荷は2/3(アップ)、−1/3(ダウン)なので合計ではゼロなんだけど、個々のクォーク核子内の分布は詳細には分かっていない。それは、クォーク間相互作用の一つである強い相互作用がもつ漸近自由性から、クォーク間距離が離れるほど強くなるため、クォークを単独で取り出そうとしてもグルーオンと呼ばれる強い相互作用を媒介するゲージボゾンが邪魔をして見えなくしてしまうから。正確にはグルーオン間の強い相互作用によって距離が離れるとエネルギーが上がるため、不確定性原理からの要請により真空から新しいクォークを作って、ハドロン(クォークのペアもしくはそれ以上で構成される粒子)として観測される。つまり中性子を分解してその構成を直接見ようとしても原理的に不可能なのだ。

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Hope fades for neutrino dark matter

http://physicsworld.com/cws/article/news/36026;jsessionid=C2F6EB8A487A8AB27FD39AD12BB9B02D
以前はダークマターの候補としてニュートリノが有名だったけど、最近の観測結果と矛盾なく説明するためにはよく知られている3つの香り(フレーバー)をもつニュートリノ(電子、μ、τ)は物質との相互作用が強すぎて候補から外れている*1ダークマターとなりうる条件としては、安定していて重力(若しくは知られていない第5の力)以外は寄与しない*2ということなので、ホットダークマター(質量が軽い(〜100 keV以下)ため宇宙のそこらじゅうを飛び交っていることから。ニュートリノはその典型例)にかわってコールドダークマター(質量が重く(〜100 GeV以上)局所的に留まっている)が有力候補と目されている。で、考えられる粒子としては、アクシオン(ヒッグスのようなスカラー粒子。自分自身か光子との弱く相互作用する。”強いCP問題”の解決に必要と考えられている。)や安定な軽い超対称粒子(LSP)、もしくは隠れたセクターに含まれる新粒子、などモデルは鬼のように存在するが実験や観測ではいずれも見つかっていない。

*1:具体的には初期宇宙にダークマターとしてのニュートリノが存在していたとすると銀河の大規模構造の仕組みが説明できない。ニュートリノとの散乱により物質が散逸してしまうため宇宙を”なめして”しまうから。

*2:weak interactionでもいいらしい。コールドダークマターの場合

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LHC冬眠する

http://www.timesonline.co.uk/tol/news/uk/science/article4813036.ece
先々週稼動したばかりのLHCが早速冬篭りしてしまった。いまから光速の99.9999991%まで加速された5TeVの陽子が衝突せんとしていた矢先、ヘリウム漏れによりマグネットが加熱して緊急停止せざるをえなくなってしまったのだった。修理には2ヶ月かかるとのこと。実際にはヘリウム漏れを起こしたマグネット間に生じた亀裂を補修すればいいだけなので2週間程度で済むんだけど、なにせ1.9ケルビン(−273.15℃)まで冷却するもんだから急に上げ下げするわけにはいかんのですよ。急激に温度を変えちゃうとマグネット自体が壊れてしまうので、徐々に暖めていき、修理が終わったら徐々に冷やしていくため、2ヶ月ほどかかってしまう。

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